2000年2月7日掲載
Enrico Pieranunzi & Bert van den Brink
Daedalus’ Wings
Challenge 原盤               1999年3月録音

 昨年発売されたピエラヌンツィの“Don't Forget The Poet” で彼の大ファンになりましたが、その作品でのクィンテット編成というレコーディングは 彼にとっては数少ないもので、通常はトリオ或いはソロの作品が多いです。そのピエラヌ ンツィが同じレーベルから、ピアノ・デュエット作品を発表しました。お相手はオランダの精鋭ヴァン・デン・ブリンクです。この人はこのレーベルに、リー・コニッツとの共演盤があるようですが、それ以外の知識はありません。ピアノ・デュエット作品で他のが思い出せませんが、果たしてどんな展開になるのでしょう。二人のオリジナルが中心ですが、エリン トンのメロディや、“I Can't Get Started”が二人其々の趣向を凝らして2バージョン収録されています。

20000207

 オランダの 美しいコンサート会場を借り、最高の調律師が1台に4時間以上かけてスタンウェイのピア ノを最高の状態にして録音に臨んだそうです。澄みきった響き渡るなかで絡みつく両者の ピアノが、創造力をぶつけています。そのお互いの演奏に極限まで神経を傾けた絡みを聴いていると、ある瞬間に1970年前後の欧州ジャズを席巻したフリー・ジャズに向かってしまう のではと、感じる場面があります。やもすると出鱈目に感じることもあったフリー・ジャズ は、互いの演奏に神経を傾けて演奏して行くことによって到達する、一つの方向であったのではと、この盤を聴いて自分の中で思いをめぐらしました。4曲が二人の共作と記されてい ますが、これは打ち合わせ無しで演奏されたものでしょう。ピエラヌンツィとヴァン・デン・ブリンクという二人のピアニストだけで収録した意義は、神経を集中し合い創造力をぶつけ、 かつ美しさを漂わせた演奏を残すことなのでしょう。共作の4曲が、さらっとしていながら、その点を強く感じさせました。引続き絶好調のピエラヌンツィを楽しめる、好盤です。