この年最初の吹込みはDIWでのものでした。しかし内容というか、傾向が今までと少し違っています。先ずは共演メンバー。マレイのリーダー・セッションでの共演という点からみると、Anthony Davis(p)は3度目になりますが13年振り。他のメンツとは初めてでして、 Ray Anderson(tb)、Kenny Davis(b)、Tommy Campbell(d)という方々での、クィンテット編成。 また演奏曲も全て初のものでして、“stompin' at the savoy”以外はメンバーのオリジナル。マレイのオリジナルは無しですよ。DIWの押しつけセッション、マレイが新たな方向性を探る、 契約履行のための遣っ付けセッション等々、発売当時は聴く前にデータからいろんなことを考えましたよ。
マレイは度々自己の作品にトロンボーンを入れていきましたが、それはオクテットやビッグ・バンドでのこと。最も少ない編成でもシクステットでの3管編成でした。ここでは、トロンボーンとじっくり向き合った作品を作りたかったのでしょう。そして、テーマは明るさ。レイ・アンダーソンはその期待に応えて、見事な演奏を繰り広げています。マレイも負けるわけなく、テナーとトロンボーンでの最良のコラボレーションを展開してます。全体は見事に明るさ、楽しさが包んでいるのですが、細部にはフリーキーな演奏が、いたる部分で垣間みれますよ。それと、リズム隊に今までにないロック色が加わってきてます。この作品のこれらの特徴、これからのマレイの作品に与える影響が楽しみになります。