2000年3月1日掲載
David Murray     The Tip
DIW原盤        1994年5月録音

 メンバーを眺めるだけで、このセッションが今までと違う雰囲気であるのを感じられます。Robert IrvingⅢ(syn, or)、Bobby Broom(g)、Darryl Jones(b)、Toby Wolliams(d)というレコーディングでは初顔合わせになる方々と、マレイ・リーダー・セッションでは3度目の共演になるKahil El'Zabar(per) が参加しているシクステット編成です。これに曲により、9度目のレコーディングになるOlu Dara(cor)、初のDaryl Thompson(g)、そして2度目になる摩訶不思議なG'Ra(wordist)が加わります。曲も、8度目のレコーディングになるマレイの代表曲“flowers for albert”以外は 初めての演奏です。スライ&ファミリーストーンのスタンドという名盤に収録されていた“sex machine”なんていうのも、取上げてますな。発売当時は、どんな音が飛び出すか、トキメイタ気分でしたね。参加メンバーについて少し説明すると、Robert IrvingⅢは1980年代のマイルス・ バンドで注目を集めた人、Darryl Jonesはビル・ワイマン脱退後の愛しのストーンズの準メンバーで、Toby WolliamsはEW&Fのドラマーの息子で、Bobby Broomはロリンズやマイルスの バンドで活躍した方です。またこの4人でESPというバンド組んでおり、その意味では息の合ったバック・サウンドが聴けるでしょうね。

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 内容はやはり言うか、ファンクです。マレイの言葉によれば、「これはオクト・ファンク。ファンクとジャズと、それにロックまでが混然一体となった音楽」というこらしい。“sex machine”で、その勢いぶりが味わえます。しかし、このリズムを得て、今までのマレイらしさが発揮されているのが、カヒル作の美しいバラッドの “kahari romare”ですね。ファンク色をジャジーに取り入れられているのが、そう感じた要因でしょうし、そこを表現するのがマレイの狙いの一つだったのでしょう。“flowers for albert” は、何とレゲエ調。しかも同名のタイトルのマレイのレビュー・アルバムで一緒に演奏していたオル・ダラもペットを吹いてます。あの鮮烈なレコーディングから17年を経て、違うコンセプ トでこの曲を演奏している二人に、常に一線で活躍・前進し、いろんなものを吸収する凄さを味わいました。全体を通して言えば、この作品だけではマレイのファンクに対する意識の持ち方を結論付けるのは、性急でしょうね。