輸入盤のCDの平均値段は、為替での変動はありますが2000円代前半というとこでしょうかね。 しかし、このナクソスというレーベルは、1000円で発売されています。この値段と、抽 象画で統一されたジャケットから敬遠していたのですが、その評判からかの作品を購入しました。
マイク・ノックというピアニストは、熱狂的なマニアがいる方だそうですね。1940年生れの彼は、二十歳前後にはオーストリアやイギリスで音楽の勉強をしていました。1960年代前半にボストンのクラブで、コールマン・ホーキンスなどのバックを務めていました。 1968年にフォース・ウェイを結成しジャズ・ロックの先駆的な役割を果たし、解散後にはエレ クトリック・サウンドに傾倒していきました。1970年代後半には再びアコースティック・ピ アノに戻ったそうです。
ここまでが彼について調べられたことですが、そのサウンドはどんな感じなのでしょうかね。ベースのはアンソニー・コックス、ドラムにはトニー・リーダス という、共に1980年代に注目を浴びた方が参加しています。“cry me a river”以外の10 曲はノックのオリジナル、或いは3人の共作です。
しっかりとしたテクニックのピアノですね。これはヨーロッパでの勉強が、その土台にあるのでしょう。硬質な音で奏でられる中に、 フリー・ジャズの演奏を経験してきたかのような部分が伺えます。調べた経歴からすると、そんなことはないのですけどね。“Transitions”“Not we but one”“Your Smile”の オリジナル曲で聴ける、アドリブでのテンションの高さ、展開の工夫、そして3人の一体感 が、ピアノ・トリオ作品としての高い位置にこの作品を置いています。またこの3曲の、悲しげだったり、開放感があったり、美しさに溢れていたりと、メロディ・メーカーとしての 才も素晴らしいですね。このノックは1960年代から活躍している人。ドルフィーと共演していたら、と思ってしまいました。