2000年1月5日掲載
One for All        Upward and Onward
Criss Cross原盤     1999年6月録音

 エリック・アレキサンダーというテナー吹きの名前は以前から聞いていますが、リーダー作品は聴いたことがありません。このグループに彼が入っているので、実質的に初めて彼の演奏に触れることになります。ジム・ロトンディ(tp)、スティーヴ・デイヴィス(tb)、デイヴィッド・ヘイゼルタイン(p)、ピーター・ワシントン(b)、ジョー・ファーンスウォース(d)が、このジャズ・メッセンジャーズのラスト作品名をつけたこのグループのメンバーです。このグループで数枚の作品を出しているそうですが、JM同様の熱い演奏が聴けるのでしょうか。

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 リズム・セクションが全体を通 して、快調な演奏を繰り広げています。スリリングと言った方が良いかな。ピアノのヘイゼルタイン作の“We all love eddie harris”は曲自体がミディアム・テンポの スリリングな曲なのですが、冒頭からヘイゼルタインの絶妙な演奏が聴けます。色気のあるベースと、控えめながら要所を押えているドラムの繰り広げる世界は、この作品の白眉になっています。それに乗って演奏されるホーン3本は、そこそこの演奏なのですが、リズム・セクションの快調さに負けている感じです。アレキサンダーのテナーは1960年代のジョー・ヘンダーソンというイメージを受けましたが、優等生的演奏の感が拭えないですね。このリズム・セクションとホーン・セクションの関係は、クリフ・ジョーダン作の曲“John Coltrane”でも感じられます。SJ12月号で大西氏が、 「コルトレーンの墓の前でも自身を持って聞いてむらえる内容だ」とコメントしていま すが、そこまでの突き抜けた演奏はホーン・セクションには感じられませんでした。 突き抜けさがあれば、名盤となる作品ではないでしょうか。8分を越える演奏時間の曲 が多いのですが、ゴルソン作の“just by myself”での5分弱の密度を濃くしたような 演奏を多く配した方が、良かったと思える作品です。