レッド・ バロンへ前月に2枚のクァルテット作品を吹込んだマレイが、今度はDIWにクァルテット編成の録音を行ないました。ピアノは前作に引続き、これで12回目のマレイとのレコーディ ングになるジョン・ヒックスです。ベースには何と24回目の共演になるフレッド・ホプキンス、ドラムには3回目になるアイドリス・ムハマッドが参加しています。7曲収録されてますが、5曲が初出です。前年の“MX”で初演奏されたヒックス作の“hick's time”、そして注目は1978年の“ロンドン・コンサート”で演奏された“concion de amor en espanol”です。これはその時のベーシストのブライアン・スミスによる曲ですが、スペインの香漂うメロディで、 当時は違うマレイの1面が開花された演奏でした。ここでこの曲を選んだ意味が、興味深いですね。そしてもう一つの注目曲は、ケニー・ドーハムの名曲“ロータス・ブロッサム”です。 ここでは何故か“asiatic raes”という名でクレジットされています。余談ですが、この作品が初めてSJでゴールド・ディスクに選定された、マレイの作品です。
マレイの音を文句無く満喫出きる1枚で すね。激しいスピードでかっ飛ぶ、マレイならではの“fantasy rainbow”が冒頭に収録され快調な予感を感じさせます。“fishin' and missin' you”と“autum of the patriarch”、 マレイ作なのですが、何て優しいメロディなんでしょう。演奏面でも、本当に暖かいバス・クラの響きと、高音連発でも耳に心地よいテナーが聴けます。そして“concion de amor en espanol”では、憂いの気持を絶妙に表現しきっています。スパニッシュ・ラブソングという副題通りの演奏ですね。バックは勿論マレイと呼吸が一致しています。特にヒックスが快調ですね。マレイ入門編には最適な1枚ということで、SJの評価もうなずける作品です。