1960年代のインパルスにおけるコルトレーンの黄金クァルテットで数多くの名演を残してきたピアニストのマッコイ・タイナーは、1965年にコルトレーンのもとを去った後は、金銭的にかなり苦しかったようです。タイナーが加わったブルー・ノートのセッションは33枚分あり、リーダー作はこれを含め7枚になります。ウッディ・ショウ(tp)、ゲイリー・バーツ(as)、ウェイン・ショーター(ts)、 ロン・カーター(cello)、ハービー・ルイス(b)、フレディ・ウェイツ(d)という豪華セプテットでの吹込み作品で、5曲中4曲がターナーのオリジナルです。この時代を感じさせるジャケットで すが、演奏はどんなものでしょうか。
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日本の印象で曲を作るケースは間間見うけられますが、 その多くは雅曲からの印象で、日本人にとっては異質なものに感じるのが多いですね。この作品でも、タイナーが1966年に「ドラム合戦」のピアニストとして来日した時の印象を、“song of happiness” という曲にしています。マッコイが琴のイメージを浮かべながらピアノを弾き、アンサンブルでバーツが竹笛を吹いています。これがモード的展開で進められており、重厚で不思議な演奏になっています。この手の曲としては、水準が高い出来ですね。この作品では全般的にパーカッシブなピアノが聴けるのですが、タイナーはさらにこれを追求していき、1971年のサハラで広く世の中から認められることになります。