1999年9月9日掲載
Johnny Griffin       sincerely ours
SweDisc原盤          1978年5月録音

 リトル・ ジャイアントという愛称で人気のあるテナー奏者ジョニー・グリフィンを、初めて取上げます。1956年のアーゴへの吹込み以降、ブルーノートやリバーサイドに次々と素晴らしい作品を発表していったグリフィンですが、1960年代には活動の拠点を欧州に移しました。この録音は、1977年に帰米し熱烈な歓迎を受け枯葉の名演を残した翌年に、行われたものです。1950年代から活躍しているトランペットのロル フ・エリクソン、オーストリアのピニストのフリッツ・パウアーが参加しているクィンテット編成で、メンバー作の曲や、パウエルの曲などを取上げています。

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 さすがエリクソンとパウアーはヨー ロッパのジャズ界で何枚もの作品を発表している人だけあって、センスがキラっと輝く演奏をしています。ベースとドラムも無名ながら、しっかりしたテクニックの持ち主です。このバックを得たグリフィンは、1950年代の名演奏の数々の感覚を失ってはいませんが、何か一つ物足りない感じがします。彼の魅力は野性味溢れるプレーなのですが、それはある程度の長さのアドリブ・ソロで発揮されるものでして、ここではさほど長いソロが無いことによってグリフィンの特徴を活かせなかったのかもしれませんね。しかしながら、哀愁を帯びたメロディがボサノバのリズムに乗っているエリクソン作の“fragrance”で繰り広げられるグリフィンのソロは、この作品の中で彼の実力をしっかりを発揮させている出来になっています。この演奏だけで、このアルバムは素敵なジャケットと共に忘れられることはないでしょう。