スタンダードっていうのは、ジャズをそれなりに聴き込んでいくと曲名を覚えてなくても、流れるメロディは頭に叩き込まれているものですよね。その演奏を聴く時は、オリジナル曲よりも一層のこと、ミュージュシャンのその曲の解釈の仕方に興味が注がれます。様々なフォーマットでの演奏で1970年代のジャズ・ピアノの世界で絶大な人気を得たキース・ジャレットは、1983年にスタンダードを中心に演奏するユニットでの作品を発表し、大反響を巻き起こしました。ドラムのジャック・ディジョネット、ベースのゲイリー・ピーコックという大御所3人でのこのユニットは、この人気に気を良くし、1985年に2作目を発表し世界各地でライブを行なったのです。これはパリで のライブ録音です。スタンダードと言っても殆ど演奏されることない曲、この盤で言 えば“The wrong blues”なども取り上げています。モチロン有名な“星影のステラ” や、“恋に恋して”などが演奏されているこの作品、キースの解釈の仕方と3人の息の合った演奏を楽しみたいですね。
1977年にゲイリー・ピーコック名義でECMに、この3人での吹き込みがあります。僕の想像ですが、このスタンダーズは1977年の3人の息の合った演奏をもう一度やりたく、結成されたのでしょう。で、何かユニットのテーマをということで、スタンダードになったのでしょう。モチロンこんな単純な理由ではないのでしょうが、この3人で演りたいよ、というのが本心なのでしょう。 4,000人収容出きるこのパリのホールで、キースのリリックなピアノを中心に3人の一体感を味わえます。“恋に恋して”は失恋の歌なのですが、最初のテーマでは恋している楽しさを表現し、トリオでの盛り上がった演奏の後のしっとりしたキースのピアノは、失恋の悲しさを見事に表現している、印象に残る演奏になっています。それにしても、キースのうめき声は・・・、これを言うのは止めときましょう。