1999年9月26日掲載
David Murray     Hope Scope
DIW原盤        1987年5月録音

 2年振り5 作目のオクテット作品です。お馴染みのメンバーとの録音ですが、新しいメンバーとしてトランペットにラズル・シディックとピアノのデイブ・バレルが参加しています。バレルはオペラなども手がけるピアニストであり作曲者でもある人で、その独特のピアノ演奏スタイ ルは叙情的で、これ以降マレイと数多くの作品を残していく方です。初顔合わせがオクテッ ト作品とは意外ですが、その演奏が楽しみです。8年振り3度目の収録になるタイトル曲が、オクテットどのように料理されるかが、この作品のもう一つのポイントでしょう。他の収録曲には、マレイ作のベン・ウエブスターとレスター・ヤングに捧げた2曲、そしてクレイグ・ハリスとラルフ・ピーターソンの作品が収められています。

19990926

 1978年のパリでのソロ公演、1979年のトリオ 作品で、激しい展開の速い曲として録音された“Hope Scope”が、ここではホンノリとした楽しさを持って演奏され始めます。ですが、突然テンポが変り全員のフリーキーな演奏に突入します。5作目のオクテット作品ですが、この雰囲気を出しているのは初めてですよ。しかしフリーキーとはいいながら、恐らく多くの決め事をしていたのでしょう、一定の枠をはみ出すことなく安心して聴けますね。これが良いのか悪いのかは別ですがね。残念なのは、バレルのピアノがその個性を発揮する場面がなかったことですね。5作目ということで完全にこなれた演奏で、刺激と言う意味でタイトル曲に用意された仕掛け以上のものが、次回のオクテットには欲しくなります。