ジャズ界の代表的ギタリストであるケニー・バレルは、この時期はベニー・グッドマン楽団にも参加していたそうですね。彼はプレスティッジの様々なセッションに起用されていまして、この翌年にはコレトレーンとの共演もニュー・ジャズで果たしていますね。この作品にはピアノにトミ・フラ、ベースにダグ・ワトキンス、ドラムにエルヴィン・ジョーンズというリズム・セクションで、バリトン・サックスのセシル・ペインが参加しています。スタンダード中心のこのアルバム、セシル・ペインの参加だけが気がかりですが。
ギターがリーダーでバックがピア ノ・トリオという編成だと、どうしてもギターとピアノの絡みが興味の一つになるため、バリトン・サックスのような低音リード楽器が入ると、その絡みの妙が失われるようなきがしました。ですが心配は無用でしたね。“don't cry baby”では、 バリトンが低音部を強調することによって、バレルのギターとトミ・フラのピアノの落ち着いた演奏がより浮かび上がったものになりました。でも一番良い出来は、 “all of you”。これにはバリトンが入っていないのです。やはりバリトンなしの方がしっくり来るのかな。全体としては、もう少し盛り上げる場面があった方が、良かったですね。