1953年にケントン楽団を辞した後、ベツレヘムに素晴らしい作品を吹き込んだクリス・コナーは女性ヴォーカリストとして人気を博していました。1956年にはアトランティックに移籍し数々の作品を発表し、1962年までここに在籍していました。この作品は丁度このレーベルの水にも慣れた31歳の時に吹き込まれた作品で、ギター入りのクァルテットや、それにホーンが入ったコンボをバックに唄っているものです。ピアノとアレンジはスタン・フリーという無名に近い方で、ギターにはマンデル・ロウが参加しています。“フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン”の作者であるバード・ハワードの曲を3曲も取り上げていることが、選曲の面では興味がありますね。ちなみにジャケットに写っているモーターボートは本当にクリス・クラフトという名前らしいですよ。
“here lies love”“good for nothin'” でしっとりと唄うクリスは、ベツレヘム時代より一層深みを表現できるようになっていますね。低音がしっかり出せるようになってますしね。で、バード・ハワードの曲 なんですが、この作品以外ではあまり知らない“on the first warm day”はスィング する雰囲気を楽しめるものですし、“be my all”はしっとりした雰囲気が滲み出る曲ですし、クリスの熱唱ですよ。でこの2曲でピアノのフリーとギターのロウの、趣味の良い演奏を楽しめます。このスタン・フリーという人、人名辞典には掲載されていない方なのですが、他の作品を聴いてみたくなる演奏とアレンジですね。やはり、コンボを バックに歌うクリスが、一番彼女の声質が艶かしく表現できますね 。