ヨーロッパ・ ジャズのファンの間では絶大な人気を誇る女性シンガーのリタ・ライスの、母国オランダのコンサー ト・ホールでのライブ録音です。1950年代初頭から既にヨーロッパで人気が高かった彼女は、1956年には訪米しジャズ・メッセンジャーズともレコーディングを行ないました。共に活動していた旦那のイルケンが他界後は、ピアニストのピム・ヤコブスとコンビを組むようになり、この録音の前年には結婚しました。この作品は、公私共にピッタリ息が合っている時の吹込みです。ヤコブスの弟のベー スとウイム・オーヴァハーウのギターとのヤコブス・トリオに、モダン・ドラムの開祖ケニー・ク ラークが加わっております。
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キュートな歌声、素晴らしいスィング感で上手さもあるし、テクニックが嫌味なところがなく、ヨーロッパのジャズ・ファンを虜にした理由がはっきりとこの作品から分かりますね。“枯葉”“アイ・リメンバー・クリフォード” “スピーク・ロウ”などいろんなテンポの曲を、ライスの魅力で紹介しています。バックではクラークが、彼女の歌を決して邪魔することなく、しかし歯切れの良いドラムを随所で披露しています。惜しい点としては、ピム・ヤコブスのセンス溢れるピアノを楽しめる場面が少ないことですね。女性シンガーによる“アイ・リメンバー・クリフォード”は、ここでのものがピカ一ですぞ。