前年に続きこの年もマレイのリーダー作は、このオクテット作品1枚だけです。オクテットとしては3作目に なるのですが、メンバーが若干替わっています。ペットがオル・ダラからボビー・ブラフォード、トロ ンボーンがルイスからクレイグ・ハリス、ピアノがデイビスからカーティス・クラークに替わりました。クラークとは4年振り2度目の競演であり、他の二人とは初競演になります。タイトル曲はクラークと4年前にロンドンで行ったライブ録音の時に吹き込まれたものであり、またデビュー・アルバムで吹き 込まれた“flowers for albert”も演奏されています。“sweet lovely”はスイスでのソロ・ライブ演奏で初披露されたもので、奥さんのミンへ捧げた曲です。
これまで20枚以上のリーダー作を発表してきたマレイですが、これほど陽気さを感じられる作品は無かったですね。4度目の吹き込みで、初めてのスタジオ録音になる“flowers for albert”は、カリプソの雰囲気のアレンジが施されています。もともと楽しいメロディの曲ですが、これまではそれにロフト・ジャズの色を投影していましたが、ここでは曲の持っている雰囲気をストレートに表現されています。また初吹き込みになる“sing song”はポップな曲で、これまでのマレイにはなかったものです。この辺りにマレイの新境地が感じられます。しかしな がらマレイの演奏自体はアグレッシブなもので、さすがはマレイと唸ってしまいます。初参加のメンバーではブラフォードのペットとハリスのトロンボーンが、勢いのある演奏を聴かせてくれています、でも4年前のライブで素敵な演奏を聴かせてくれたピアノのクラークが、おとなしい演奏に終始していたのが残念です。