1999年8月24日掲載
David Murray      ming
Black Saint原盤    1980年7月録音

 マレイのオクッテト編成での、初めての作品です。ペットにオル・ダラ、コルネットにモリス、ドラムにスティーブ・マッコールというお馴染みのメンバーですが、他の4人はマレイ作品では初競演になります。アルトにエアー のヘンリー・スレッドギル、トロンボーンにジョージ・ルイス、ベースにはウィルバー・モリスという方々です。ジャズ・ミュージュシャンは大編成のバンドを率いて表現したいという気持ちが強いとの話を以前聞いたことがありますが、マレイが8人編成で表現したいものは何なのでしょうか。前作に続き奥さんの写真をジャケットに使い、アルバムのタイトルまで奥さんの名前にしています。“ミンがいなかったら、この作品は出来なかった”とのマレイの言葉が裏ジャケットに書かれています。5曲中4曲はお馴染みの曲でして、最高のメンバーを得て、どんな料理をしているかがポイントでしょう。

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 それまではモリスやオル・ダラのペットと一緒の2管までの編成で演奏してきたマレイが、WSQでの演奏活動を通じて重厚なアンサンブルによる音の広がりを求め始めたため、出た結論が8人編成だったのでしょう。またこれまでスタジオ録音の場合は1日だけでしたが、今回は2日間での録音になっています。この大編成のバンドでの2日間のスタジオ録音が実現出来たのは、マレイのそれまでの活動内容とレコードの販売実績が、ブラック・セイントに評価されたためでしょう。マレイがこのチャンスまでに温めていた考えがこの2日間で実を結んだようで、それまでのマレイの曲にアンサンブルを通しての重厚さが与えられています。それは本当に素晴らしいのですが、当然ながらマレイの骨太のテナーを楽しめる場面が少なくなっています。この欲求をこの編成で満たし てくれれば、最高なのですがね。