マレイ2作目のリーダー・アルバムと素直に言えないのが、苦しいところです。 この作品の5曲中3曲が6月29日の録音なのですが、残りの2曲が5月14日のスタジ オ・ライブ録音で、マレイとホプキンスのソロ演奏なのです。この2曲が、第1作として紹介した“フラワーズ・フォ・アルバート”より1ヶ月以上前の録音になるのです。しかしこのアルバムの主が“フラワーズ・フォ・アルバート”の3日後の録音であることから、ここではこの作品が2作目として扱います。メンバーは前作と同様で、曲はこの後マレイ にとって重要なレパートリーになっていく“dewey's circle”“low class conspiracy” “B./T.”が披露されています。
短いテーマ・メロディをもとに、マレイを中心にして激しいインプロバイゼーションを繰り広げています。“low class conspiracy”は静かで 落ち着きのあるメロディ、“B./T.”はアップ・テンポ、そして“dewey's circle”はこの時の3人の関係を表すのに最も相応しい曲です。まるで階段を駆け上がっていくような攻撃的なテーマをもとに、3人の充実した演奏が聴けます。そして5月14日録音のマレイとホプキンスのソロ演奏は、二人の演奏力と想像力の高さを存分に堪能できます。ロフト・ムーブメントの中心人物になっていく21歳のマレイが、ここにいます。最後に話それますが、この作品のプロデューサーは、マイケル・カスク ーナです。1980年代にブルー・ノートへの携わり、1950年代の作品の発掘作業を行っていたカスクーナも、この時代はロフト・シーンに身を投じていたのですね。