1999年7月20日掲載
David Murray           flowers for albert
India Navigation原盤   1976年6月録音

 マレイの初リーダー作品で、彼のレコーディングとしての活動は、全てここから始まったと言って過言はないでしょう。メンバーは共にロフト・シーンで活躍していた人達で、ベースのフレッド・ホプキンスとはこの後何度も競演するマレイにとって重要な存在の方です。ペットのオル・ダラも当時名を上げていた人で、ドラムにはフィリップ・ウィルソンが参加しています。タイトル曲はこの後マレイが何度となくレコーディングしている曲です。また1997年にCD化された時は3曲追加されており、その中の“the hill”と“santa barbara and crenshaw follies”も、後に繰り返し吹き込まれる曲なのです。NYCのレディーズ・フォートでのライブ録音です。

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 マレイを聴きつづけて15年、何枚か所持していないのがあるものの、ほぼ彼のリーダー・アルバムを持っているのですが、改めて彼の初作品を聴いてみると、曲作りにおける美しさとこの録音時のロフ ト・シーンの熱気を再考させられてしまいます。このアルバムの互いに刺激し合うソロの応 酬は、数え切れないほどの作品が世に出たロフト・ムーブメントの中で、最高傑作のひと つと言えるでしょう。フリー・ジャズは各自が自由奔放に演奏していったのに対して、ジャズの伝統との融合を試みていったロフト・ムーブメントの中で、ジャズ史に永遠に語り継がれる作品です。そこには、“flowers for albert”に代表されるように、綺麗で美しく聴く人の心を打つメロディが、フリー・ジャズの流れからくる各自のソロを伝統に回帰 させる働きがあったのでしょう。同じく美しいメロディである“joanne's green satin dress” はローレンス“ブッチ”モリスの曲であり、この作品のメンバーと共に、彼もマレイにとって重要な存在となっていきます。