この人の名前は聞いたことがない、読み方も分からない。このイタリアのレーベル名も初めて聴くものなんだよね。データを見たら、NYで録音されているのだけれど、DATで録音している。DATって、プロも使うのかなぁ、レコーディングで。これは自主製作盤に近いものだと、勝手に決めました。ジャケットを見ると、地下鉄の中で足を抱えて座っているのが、このピアニストなんだろうな。あぁ、これはピアノ・トリオ作品です。真中に疲れきった中年男性、奥に何かを見つけたような表情の東洋風の女性。何かが匂ってくる。これは掘り出し物かもしれませんぞ。
ほんわかした雰囲気を漂わせながら、綺麗なアドリブを繰り広げていくのが、彼のスタイルですね。最初オリジナル曲を聞いた時は、最初はテーマ・メロディがどこにあるのか分からなかったが、タップリとアドリブを披露した後に聴かせてくれます。たっぷりと枕に時間をかけた落語のようですね。その真骨頂が発揮さ れるのが、パウエルの“celia”です。なんと枕としてこの曲の前に自作の“walking with bud” を演奏しています。この曲は“celia”を盛り上げるのに存在している曲なのです。しかしアルバム全体を通すと、何か焦点が定まっていない感じが残りますね。枕に手をかけすぎて、本題が霞んだような印象が残るアルバムです。