1952年にマックス・ローチに見出されて、ピアニストのウォルター・デイビスjr.はNYに進出しました。この録音の時の彼は、ジャズ・メッセンジャースにボビー・ティモンズの代役として、参加していました。彼の初リーダー作である本作品は、ペットにドナルド・バード、アルトにマクリーンというこの時代を代表するホーン奏者を迎えて、クィンテットで吹き込まれたものです。何かブルー・ノートの彼に対する期待の高さが感じられますね。全曲彼のオリジナルである本作品、どんなセッションでしょうか。
三つの点で良い作品に仕上がってます。第一に極上のハード・バップ・セッションです。まぁ、バードとマクリーンの2本が入っていて、サム・ジョーンズのベースにアート・テイラーの太鼓ですからね。それとリハーサルを念入りに行うブルー・ノートのセッションですから、当然のことですね。2点目として、デイヴィスのオリジナル曲が充実した出来であることです。またそれがテンポの速い曲から甘いバラッド、はてはマンボ調の曲まであり、1枚を通して飽きの来ない曲を提供しています。最後がリー ダーであるデイヴィスのピアノが、突出することなく、しかしながらしっかりと自己主張している点です。甘いバラッド・ナンバー“スィートネス”は8分の演奏時間なのですが、他の曲と違ってデイヴィスのピアノ演奏がほとんどを占めています。これを聞くと誰でも彼のトリオでの作品を聞きたくなりますよ。しかしそれが現実になったのは、この録音から20年後に日本の会社で製作されるまで、かかってしまいました。