1999年4月6日掲載
Kenny Barron       the moment
Reservoir原盤     1991年9月録音

 1957年には10代半ばで早くもプロデビューしたピアニストのケニー・バロンの、ルーファス・リードのベースとビクター・ルイスのドラムと吹き込んだトリオ作品です。数々のバンドで活躍してきてサイドマンとしては定評があったバロンも、自身のリーダー 作品となると余りぱっとしなかった彼ですが、このアルバム以降徐々にその評価を上げて、気になる作品を幾つも出してきました。きっかけとなったこのアルバム、人気の理由を探ってみます。

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 LPが出現する以前は収録時間の関係から1曲あたり3分弱の演奏形態でしたが、LP出現以降は片面20分前後の収録が 可能になり、ジャズのレコードでの表現方法が変わりました。1曲の演奏時間制限も気にすることなく演奏出来、また片面20分計40分というのは聞くのに実に適する 時間だった言えましょう。さらにハード・バップ出現期がLP出現と重なったため、アドリブを重視しする演奏形態には、LPがうってつけの媒体となり、数々の名盤を 生み出してきました。15年ほど前のCD出現なのですが、クラシック側からの要望で収録時間が70分となりました。CDが普及してくると、ジャズ界もCDを意識したアルバム作りになり、収録時間も60分前後が多くなりました。これには良い面も当然あるのですが、その弊害としてただダラダラ長く演奏しているアルバムも実に多く見受けられるようになってきました。でこのケニー・バロンのピアノトリオ作品、9曲収録で計71分の収録時間、1曲平均8分の演奏です。3人だけの演奏でこれだと、 ダラダラ演奏を危惧してしまいましたが、聞いてみると良い方に裏切られました。バロンのピアノは本当に集中したものですし、ベースとドラムとの連携も素晴らしく練ら れたものになっています。バロンの演奏スタイルは派手に盛り上げ場面を作るものでは無いだけに、驚きです。録音は1日だけですが、恐らくリハーサルに何日もかけたのでしょうね。またreservoir というレーベルは2月22日に紹介した pete malinverni の素敵なピアノトリオ作品を出しており、きっとミュージュシャンの意思を尊重させた録音をさせているのでしょうね。このレーベルからは目が離せません。バロンはこの ミディムテンポの曲が中心のこのアルバムで、50歳を目前にして自分のスタイルを確立出来、この後の今に続くまでの活躍に繋がっていると思います。