1999年2月24日掲載
Charles Mingus      the clown
Atlantic原盤        1957年2月録音

 日本では道化師というタイトルで発売されている、ベース奏者チャールス・ミンガスのアルバムです。前年にあの名盤 直立猿人を吹き込んだ彼は、更なるスモール・コンボでの雄大なサウンドを目指してこの作品を録音しました。ドラムのダニー・リッチモンド以外はこの録音のために集められたミュージュシャンです。僕はミンガスの作品は、ドルフィーとヨーロッパをツアーした時のライブレコーディングを良く聞いてましたが、本作品を中心とした歴史的名作は買った時に5回ほど聞いただけというのが正直な話です。当時は何か近づき難い印象があったのかな。10年振りに聴く本作品、彼のベースの音とアンサンブルを中心に聞いてみます。

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 1曲目の"haitian fight song" の出だしのベースの音を聞くと、これが本当のウッドベースの音だと実感しました。ピックアップマイクが発達した以降は、弦を軽く弾いただけでも音が拾われました。しかしこの時代は弦を掻き毟るように弾かなければマイクに音が伝わらなかったという話を読んだことがあります。

 それに続くカーティス・ ポーターのサックスとジミー・ネッパーのトロンボーンの作り出すアンサンブルも、レギュラー バンドのようなまとまりがありますよ。続く2曲も同様のことが言えますね。

 で、最後のタイトルチューンである"the clown" 、これが問題ですね。ナレーションが入っているのですよ。1960年代後半まではロックでもこのような試みは多く行なわれてきましたが、今聞くと古めかしさを強く感じます。

 これ以外の曲は、この時代の優れた他のジャズ同様に、今でも光り輝いて聞こえるだけに残念に思いますが、ミンガスがこのレコーディングでの目的がこの曲でしょうから、ジャズの歴史の1コマとして捕らえるべきでしょうね。