1999年12月22日掲載
David Murray and friends   MX
Red Barron原盤        1992年9月録音

 ボブ・シールのプロデュースとしては4作目、レッド・バロンからは3作目の作品になります。注目点の一つはメンバーですね。マレイのリーダー作への常連参加 として、ヒックス(p)が9回目、ホプキンス(b)が20回目、ブラッドフォード(cor)が 3回目、ビクター・ルイス(d)が2回目になります。で注目の人として、ラヴィ・コル トレーン(ts)トレーンの参加があげられます。偉大なミュージュシャンの子供という捉え方をどうしてもされますが、堅実な活動をしているミュージュシャンです。この年の前後に、エルヴィン・ジョーンズのサイドとしてブルーノート東京に出演したのを聴いたのですけど、確かソプラノで好演をしていました。ここではテナーだけですが、マレイとのバトルが楽しみです。もう一つの注目点は、やはりタイトルです。 アメリカの伝説的な黒人指導者マルコムXの名をタイトルにしていますが、この年にスパイク・リー監督の映画「マルコムX」が公開され、評判を呼んでいました。キング牧師よりマルコムXの方が黒人ミュージュシャンから敬愛されているらしいですが、 マレイはここでどんな風にその敬愛の気持を表現しているのでしょうか。心配なのは、 マルコムX再評価の中で、単にその流れに乗るためにボブ・シールが考えた作品にな ることですね。

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 曲名からマルコムXというアルバ ム・タイトルに結びつくのは、“MX”と“Bluse for X”の2曲です。両曲ともボブ・ シールとグレン・オッサーという方の作品ですが、“MX”は小粋なミディアム・テン ポの曲で、マルコムXをイメージ出来る曲調ではありませんね。“Bluse for X”は、 落ち着いた清らかなブルース・テーマの後、一転して激しいソロの展開になります。 マレイ-ブッラドフォード-ヒックス-ラヴィ-ホプキンスと続く怒りが篭ったようなソロの展開はは、この作品の最大の聴き所です。特にヒックスの激しいソロは珍し いだけに、驚きを持って聴きました。この後にまたテーマに戻るこの13分に及ぶ曲、 構成とその内容が素晴らしい出来になっています。他の曲でもホーン3本とピアノに ソロが与えられて、それぞれ好演していますが、ラヴィはこのメンバーの中で変に意 気込むことなく無難な演奏を行なっています。曲としてはマレイ作の“icarus”が、 ゆったりとした夜中のNYの裏通りに流れる空気の肌合いを感じさせる曲で、メンバー の熱演と共に楽しめます。