エンリコ・ピエラヌンツィというヨーロッパのピアニスト、人名辞典には掲載されていませんが、古くから活躍されている方です。日本でも欧州ジャズ・ファンの間では人気が高かったのですけど、一般的に名前が知られてきたのは欧州ブーム、そしてピアノ・トリオの人気が高まったここ数年のことです。僕は1980年代のタイムレス・レーベルから発売された盤を1枚持っているだけでしたが、その時は他の盤も聴きたくなるものではなかったです。Hein Van de Geyn(b)、Hans van Oosterhout(d)に加えて、Bert Joris(tp)、Stefano d'Anna(sax)の2本加えたクィンテット編成のこの作品、内容は明日書きますが、ここ2ヶ月の愛聴盤になっています。
全ての楽器が、特にホー ン2本とピアノの色が、光に対して同じに反射しています。個々には勿論楽器の音色そのままなのですが、曲という光りに対して見事に協調した響きになってます。ハード・バップでのクィンテット演奏は強烈な自己主張をぶつけ合うのに、対照的な演奏です。全てがピエラヌンツィの自作で、11曲中2曲が味付けとしてメジャー調なのですが、他はマイナー調で、ミディアム・テンポの曲が殆どです。ライナーを読むと発表済みの曲が多いようです。 アルバム全体を詩集として考えて、統一感が出るように各曲の長さと、全体へのバランスを考えて演奏するのを心がけています。この作品はピエラヌンツィにとって19年ぶりのクィンテット編成のもので、長い間暖めていた構想だそうです。彼のこの作品に賭ける情熱が、作品の隅々から聴き取れます。ベースとドラムも、ピエラヌンツィと実に息が合った演奏を繰り広げており、特にベースのHein Van de Geynの好バッキングが全体を引き締めていますね。このベースは、プロデューサーも務めています。今年の僕のベスト作品になるの は当然のことで、これから末永く付き合っていく盤に間違いなくなるでしょう。ジャズ好きの方全てに、自身を持って薦められる作品です。