初めてこの作品を手にした時は、ナンなのコレ、というのが正直な感想でした。ピエール・ドルジェというギタリストは有名な方なのでしょうか、少なくてもレコーディングではマレイとは初共演です。ドルジェのオーケストラとマレイの共演というスタイルのこの作品ですが、タイトルの付け 方がジャケでは、ドルジェのオーケストラにマレイがフューチャーされているという書き方です。何故かピアノにホレス・パーランが入っているこのオーケストラと、どんな演奏をマレイは繰り広げるのでしょうか。ヨーロッパの有名なジャズの賞を受けたことに因んだタイトルですが、内容に関連があるのかな。
ビックリ箱、いろんな物が詰まっている、楽しい作品ですよ。ドルジェ作の“david in wonderland”はチェルシー・ブリッジに似た美しいバラッドで、パーランのピアノから始まりマレイのテナーが絡んでいき、ベースとドラムが加わって、素敵な演奏になっています。綺麗なペット・ソロも魅力的でして、ホーン・アンサンブルもアクセントを加える効果を発揮しています。マレイとパーラン、この二人だけの演奏が “in a sentimental mood”、グッと泣かせてくれます。ビックリ箱の本領は“gospel emdley”でして、ドナルド・マレイという女性歌手をメインにした、ゴスペル・ナンバーです。マレイの作品で純粋に歌が主役の曲は、これが初めてですよ。この女性はマレイのお姉さんなのかな、勝手にそう思い込みました。さてドルジェの演奏なのですが、ソロを聴けるのは、軽く流して演奏されている“shakil warriors”くらいですね。そしてオー ケストラを意識出来るのは２曲だけで、これはこれでこんなもんでしょう。マレイの話でこの作品に触れられることが少ないようですが、ゴスペル女性ヴォーカルやパーランとのデュオといい、重要な作品だと思いますよ。