1999年11月14日掲載
Walter Bishop Jr.      Just in time
interPlay原盤         1988年9月録音

 ビ・バップ期に活躍しながら麻薬のため引退同然だったピアニストのウォルター・ビショップ・ジュニアは、1961年に奇跡的な名作“スピーク・ロウ”を吹き込みました。その後の彼の活動は、この名作の重圧からなのか、特に1960年代後半から1980年代半ばまで良い作品を発表しているとは言えませんでしたが、1989年にこのピアノ・トリオ作品が発表された時は大評判を呼びました。レコードとCDが同時発売されたのですが、それぞれ収録曲が違っていましたね。僕は出来の良さから両方買ったのですが、今回はレコードで聴いてみます。

19991114

 快適にスィングするピアノ、ベースとドラムが強烈に、しかしながらピアノを邪魔することなく絡んでいくというのが、ピアノ・ト リオに求められることの一つではないでしょうか。この作品は、見事にその点を聴かせてくれています。ウォルター・ボルデンのつぼを逃さないドラム、アルコがチェンバース風でがっかりする場面があるが、力強いウッド・ベース本来の音を奏でるポール・ブラウンが、好サポー トを行っています。“Just in time”というピアノ・トリオの定番曲を、milestone のフレー ズを混ぜながら憎いまでに軽やかに弾いているビショップのピアノは、“スピーク・ロウ”や “サマー・タイム”といったこの30年前に吹き込まれた作品でしか語られない彼の経歴に、 新たな1枚を加えることになりました。他の曲でもいろんなおかずを加えながら演奏される本作品は、1990年代のピアノ・トリオ・ブームの先鞭をつけた作品になっています。