フルートの他に、クラリネットやアルト・サックス、そしてピアノまで演奏するサム・モストは、1930年にアトランティックで生まれました。1953年から自分のグループで活動し、1954年にはダウンビート誌国際批評家投票のフルート新人部門で1位となりました。それ以降はマット・マシューズやテディ・チャールズ、そしてレッド・ノーボのコンボで活動していましたが、1960年中頃からはラスベガスで演奏していました。そして1976年にザナドゥでカムバックとなりました。(新・世界ジャズ人名辞典より)
20歳代中頃に5枚のリーダー作品を残し、しかし中央での活動から長らく離れ、そして40歳代中頃にカムバックしたサム・モストが残したのが本作品です。ケニー・バロンやジョージ・ムラーツが参加して1978年に録音され、1980年に発売された作品です。(一部Wikipediaからの情報)
ここではサム・モストはフルートに専念しての演奏であり、全8曲が彼の手によるものです。
アルバム名にある「Attic」とは、「屋根裏(部屋)」との意味で、家具などをしまう物置であり、以前には貧しい人の住居でもあったとのことです。本作品のアルバム名を訳するなば、「私の心の奥に閉じ込めた(音楽)より」なるのでしょうか。
10年間ほどの彼のラスベガスでの活動は、好きな音楽を仕事にしながら好きなことが出来ない辛さと寂しさを、嫌というほど味わった時期なのでしょう。想像ですが、家族を養うために、自分のやりたい音楽を心の奥底に仕舞い込んでいたのでしょう。
再び自分の好きな音楽に取り組める環境となった彼(と私は想像)は、そしてザナドゥから声を掛けられた彼は、この作品で心の奥底から溢れ出したジャズを演奏しています。そんな人間の力強さを感じる作品です。
最初に収録されている「What Is, Is」から、彼の情念がブルースと混じり合い、素晴らしい作品になっています。