インパルス!時代のコルトレーンのスタジオ・セッションが行われた年月日については、そのほとんどが早い時期から公になっていました。1964年前半のコルトレーンのスタジオ活動は、アルバム「クレッセント」の二度目のセッションである、6月1日が最後であると誰もが信じていました。それから半年後のアルバム「至上の愛」のセッションまでは、スタジオ録音は行われていないと、考えられていました。
このことはインパルス!のセッションという意味では正解でありますが、黄金カルテットでのスタジオ・セッションという意味では間違っていました。
カナダ人の映像作家のジル・グルーがフランス語映画「Le chat dans le sac(袋の中の猫)」制作にあたり、音楽をコルトレーンに依頼し、その録音がこの1964年6月24日に行われたのでした。
その演奏内容が、2019年にインパルス!から発売されたのです。そこに至るまでの過程は、「今日のコルトレーン」をお読みください。次の演奏がこのCDに収録されています。
Naima (Take 1)
Village Blues (Take 2)
Blue World
Village Blues (Take 1)
Village Blues (Take 3)
Like Sonny
Traneing In
Naima (Take 2)
1970年代から発売され続けているコルトレーンの未発表ものには、「世紀の大発掘!」とのような宣伝文句が使われてきましたが、本作品はその言葉が本当に似合うものです。何しろ、その演奏が行われたこと自体が長年に渡って、表舞台で語られてこなかったからです。
各曲については「今日のコルトレーン」をお読みください。
コルトレーンがジル・グルーの映画制作意図とリクエスト曲を受け、コルトレーンの考えも合わせ、本セッションでの選曲になっています。
映画「Le chat dans le sac(袋の中の猫)」の鑑賞をお勧めします。今日時点でも YouTube で全編視聴可能です。そうすれば、映像制作に情熱をぶつけていたカナダ人ジル・グルーの情熱と、それに応えたコルトレーンの真摯な姿を、このCDから感じ取れることでしょう。