今年に入ってからSNSでこの作品を知り、購入しました。先ずはWikipediaから引用して、テナー・サックス奏者のカーター・ジェファーソンの経歴を少しばかり紹介します。
1946年生まれの彼は、クラリネットを最初に手にし、次にアルト・サックス、そしてテナー・サックスを演奏するようになりました。1960年代にはザ・テンプテーションズやザ・シュープリームスのバックで演奏していました。1970年代になるとジャズ・メッセンジャーズでブレイキー御大の薫陶を受け、さらにそこでウディ・ショウと知り合うことになりました。ウディ・ショウが自分のバンドを結成すると、当然のようにカーター・ジェファーソンはそのバンドに加わりました。
「ウディ・ショウ・グループのテナー奏者として活躍したカーター・ジェファーソン唯一のリーダー作! トランペットには日本の至宝 日野皓正とギル・エヴァンス・オーケストラで活躍した大野俊三! ウディ・ショウ・プロデュース作品!」と国内盤CDの帯に書かれている本作品を、今日は聴いてみます。
最初の3曲は、日野皓正とのセッションで、ピアノにはハリー・ウィテカーという方が加わっています。1970年代の香り漂う演奏の中で、重量感あるカーターのテナーと、勢いの日野皓正の演奏を楽しめる内容です。
後半の3曲は、大野俊三とのセッションで、ピアノはジョン・ヒックスです。こちらではストレートにジャズの迫力を満喫できるものになっています。コルトレーンに触発されてのハードな演奏でカーターのテナーの迫力が光る曲や、熱気に圧倒されるブルースナンバーでのカーターのソプラノ・サックスを楽しめる曲があります。そして白眉はカーター作のバラッド「Song For Gwen」でしょう。スローな中でのカーターのテナーには、美しさと厳しさが合わさって響いています。
またこの後半の3曲では、ヒックスのピアノのスリリングさ、大野俊三の安定した演奏も、好演を支えています。
再びWikipediaからの引用になりますが、大酒飲みのカーターは1993年に肝硬変、腎不全、胃潰瘍、出血性食道などの病気のため、47歳の若さで亡くなりました。
その生涯でのリーダー作は、本作品だけです。もっと多くの作品を残していれば知名度も高いものになったのでしょう。しかし逆に考えればウディ・ショウとの出会いでリーダー作を残してくれたことで、録音から40年以上経った中で私が本作に触れることができました。