今から15年前に、大和市主催の映画監督 今村昌平に関する催しに行きました。今村監督作品を三本上映し、その間に小沢昭一氏の講演との内容です。
小沢氏によれば、1963年に知人である今村監督から、藤原審爾作の「赤い殺意」の映画化にあたり、美空ひばりに主役としての出演交渉を頼まれたそうです。当時の小沢氏は日活所属、日活の大スターである小林旭は美空ひばりと事実上の婚姻関係にあったため、今村監督は知人の小沢氏に依頼したそうです。
美空ひばりは断ったそうです。その際のお言葉が、「私は文芸作品には興味がありません」とのものだっとのことです。
「つまり、自分は大衆芸能の人間だ、との意味です。私なぞ、大衆芸能の小沢を自負していながらも、今でも文芸作品の声がかかれば、ひょいひょいと引き受ける。77歳の私ですが、20代半ばの美空さんの域に、まだまだ達しておりません」と小沢氏は、笑いをとりながら語っていました。
この美空さんのCD2枚組には、「Jazz & Standard Complete Collection 1955 - 1966」との副題がついています。彼女が海外の有名曲を歌ったものを集めたCD集との内容です。
「大衆芸能の美空」を聴いてみます。
合計41曲がCD2枚に収録されていますが、例えばCD1は「Love」「Lover, Come Back To Me」で始まり、CD2は「Take The "A" Train」「Stardust」が冒頭に収録されています。これだけ見ればジャズ系の曲を集めたものとなりますが、「アロハオエ」や「愛の讃歌」なども収録されています。耳馴染みの曲から、聴いたことはあるな程度の曲まで41曲が並んでおり、日本語が英語が半々となっています。
それらを美空さんは圧倒的な歌唱力と、言葉を大切にして歌っています。「言葉を大切にして歌う」ということが、これほどまで素晴らしいものだと芸術の域に・・・、などと思ってしまう私はまだまだなのでしょう。大衆芸能を極めた美空さんを堪能できる2時間です。