2020年7月9日掲載
Paul Gonsalves      Boom-Jackie - Boom - Chick
Vocation原盤          1963年2月録音

 「これぞ、ヨーロッパ・ジャズの最高級の幻盤!」と帯に書かれているCDを私が購入したのは、2007年のことでした。この時点では欧州ジャズブームは峠を過ぎた感もありましたが、オリジナル盤市場では高値で取引されていました。ポール・ゴンザルヴェスの欧州第一作の本作は、六桁超えは当たり前で、私が目にした限りでは大卒初任給も超えて、オリジナル盤市場で取引されていました。

 共演者は英国のピアノトリオです。ピアノのパット・スミスは、ディジー・リースとの共演で知られており、1970年代までロンドンのクラブで活動していた方です。ベースのケニー・ナッパーは、ロニー・スコット・ジャズ・クラブのハウス・ベーシストだった方で、堅実な活動を行っていた方です。ドラムのロニー・スティーヴンソンもロニー・スコット・ジャズ・クラブで活動していたことがあり、また1960年代のイギリスではミュージシャンから信用が厚いドラマーでした。

 そんな英国三人衆とゴンザルヴェスが組んだ本作、録音は何故だかスイスで行われました。

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 ホンワカにブロウするテナー・サックスの音色に、ゴンザルヴェスの人間性を感じます。彼にとってお気に入りのヨーロッパでの生活は、この作品にゴンザルヴェスの音楽人生を強くぶつける背景になったのでしょう。

 またいろんなタイプの曲を取り上げていることが、この作品を愛されるものにしているのでしょう。スタンダード「I Should Care」でのゴンザルヴェスの存在感は、なかなかのものでした。

 そして続けて演奏しているのは、コルトレーン作の「Village Blues」ですが、サックスが2本入っています。まさかオーバーダブなのかと思いましたが、Wikipediaを見ますとジャック・シャープというテナー・サックス奏者が参加しているとあります。またCD裏ジャケに忠実に再現されているライナー・ノーツを、あまりにも小さな文字に悪戦しながら読みますと、パット・スミスがこの曲にはもう一本サックスをと提案し、スタジオにいた人間が演奏できるとのことで、誰も名前を知らない人に演奏させたとあります。そしてそれが良かったのか、彼にもう1曲演奏させたとのことです。