2020年6月6日掲載
Max Roach              Deeds, Not Words
Riverside原盤           1958年2月録音

 粗い粒子のジャケ写です。当時で言うならば、フィルムASA3200で撮影したのでしょう。この粒子の粗さが、サングラスの奥にあるマックス・ローチの瞳の訴えの強さを、想像させます。

 1956年にクリフォード・ブラウンとの突然の別れを迎えたローチは、虚脱状態から抜け出した後に、再び自分のバンドを編成し始めました。1956年暮れには、ケニー・ドーハムとレイ・ブライアントを迎えて活動し、メンバーの入れ替えを行いながら、1958年初めには本作品のメンバーとなっていました。

 23歳のジョージ・コールマン(ts)、20歳のブッカー・リトル(tp)、そして18歳のレイ・ドレイパー(tuba)と言うのがフロント・ラインで、ベースには23歳のアート・デイビスというメンバーです。

 国内盤CD封入解説から本作の背景を紹介しましたが、当時34歳のローチが若手と組んだ作品を、今日は聴いてみます。

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 ローチはホーンの扱い方が非常に上手い方だと、改めて実感しました。ピアノレスでのチューバの使い方、コールマンのテナーサックスの音色の活かし方、そしてリトルに思いっきり吹かせる場面を用意するあたり、流石はローチであります。

 リトルにとってはジャズマンとしての活動の出発点であるここでの演奏ですが、その終焉はこれから僅か三年後となります。私にとってもう少し活動していればどんな演奏をしたのだろうと思うミュージシャンの筆頭格が、リトルです。

 タイトル曲名は「言葉でなく行動だ」であり、ローチの政治的思想の表れですが、演奏はそこを意識する事なく、ジャズの凄みを見せつける演奏です。そんローチの活動は二年後の名盤「We Insist!」に結実するのですが、私は本作品に親しみを覚えます。

 最後にですが、私が持っているのは1992年にCD国内発売されたものですが、最後にCD化追加曲が入っております。オスカー・ペティフォードとのデュオでの、六分弱の演奏で、1958年2月(3月説もあり)のものです。このCDを買った時は、何でこんな曲追加をするのだろう、本作品とは関係ないであろうと思っていました。

 今回「今日の1枚」で取り上げるにあたり、CD封入解説を読んだところ、オリン・キープニュースのこの追加曲に関する一文が目に止まりました。それによれば、ロリンズのセッションのためにスタジオ入りしていたローチとペティフォードですが、なかなか主役のロリンズが現れない、そこでテープを回してと頼み、二人で「There Will Never Be Another You」を演奏、しかしそのテープは長らく眠ったままだったとのことです。1992年にCD化するのにあたり、このデュオ演奏を世に出すとしたら、本作「Deeds, Not Words」が相応しいと判断したとのことです。

 本作はドラムのソロ演奏で終わります。そしてこのCDでは、その後にドラムとベースのデュオ演奏が流れる訳です。今回キープニュースの話を頭に入れながら聴いてみれば、何ともドラマがある演奏の流れを、私は感じました。長い月日を経て、私はようやくキープニュースの思いを感じることができました。