2020年1月1日掲載
Max Roach Quintet
Vogue原盤              1949年5月録音

 渋谷の小さなジャズ盤専門店では、隅のデッドスペースに10吋盤を段ボール箱に入れ置いておりました。その値段は貧乏学生の私が買えるものから、一ヶ月間のバイト代を注ぎ込んでも買えないものまでありました。私はこのマック・ローチの10吋盤をそこで見た記憶がありますが、その値段までは覚えておりません。

 最初のジャズ祭は、1948年にフランスのニースで行われたとの話があります。その翌年の1949年にはパリに場所を移して「第1回パリ・インターナショナル・ジャズ・フェスティバル」が開催されました。アメリカから多くのジャズマンがこれに出演し、パーカーの演奏やマイルス入りダメロンの演奏は何らかの形で世に出ました。

 そのジャズ祭に参加していたケニー・ドーハム(tp)、ジェームス・ムーディ(ts)、アル・ヘイグ(p)、そしてトミー・ポッター(b)とのマックス・ローチのこの作品での演奏は、スタジオ録音されました。マチネ興行を終えたのちに、スタジオに入ったそうです。

 私が中古コーナーで買ったCDでの解説の後藤誠さんよれば、ヴォーグはパーカーの作品を録音したかったのですが、このジャズ祭の興行主であるノーマン・グランツはそれを認めなかったそうです。ならばとヴォーグはジェームス・ムーディに目をつけて、本作の録音になったとのことです。では何故マックス・ローチ名義で発売されたのかですが、後藤誠さんは「深い意味はない」と書いています。

 この作品はプレス枚数の少ないことからかなり希少のようです。恐らくは私が渋谷のジャズ盤専門店で見た本作もには、少なくとも5桁の値段が付いていたことでしょう。

20200101

 ドーハムとローチの共作となっている、よく聴くタイプの曲「プリンス・アルバート」でのドーハムとムーディのホーンの艶感はさすがというものですが、30分弱の演奏全体を通しては、とにかく演奏しました、との感は歪めないものです。ドーハム入りの作品は全て集める、ビ・バップ期の作品には目がない、との方々以外の人には必要ない作品でしょう。