「Steam」は「蒸気、蒸気をだす」という意味であり、口語では名詞では「馬力、精力」、動詞では「激怒する」という意味があります。スラングとしての使われ方は無いようです。
「ing四部作」の最後となる4枚目の本作のタイトルの意味合いは、「このバンドの推進力」というものではと思います。
マラソン前半から5曲、後半から1曲が本作に収録されれており、6曲中2曲でコルトレーンはお休みとなっています。
ここで余談ですが、オリジナル盤好きの方々にとっては、レコードがいつ発売されたのかが重要な基準になっています。何しろ、プレスティッジにしてもブルーノートにしても、規格番号順に発売されていないため、発売日の特定は難しいものです。
その中でブルーノートについては、9年前にフレデリック・コーエン氏がまとめた著作により、1500番台と4000番台で1965年までに発売されたものについては、発売年月が特定されました。しかしプレスティッジとなるとそのような調査物は無いのですが、「ing四部作」についてウィキペディア掲載の発売時期情報は次の通りです。(2019年3月末の確認)
「クッキン」1957年
「リラクシン」1958年3月
「ワーキン」1959年12月
「スティーミン」1961年5月
ただしウィキペディアの情報には不確かなことも多く、ブルーノートについてはフレデリック・コーエン氏の著作と異なっているものが散見されます。しかし上記のうち「リラクシン」と「ワーキン」については、ウィキペディアのページに情報源が明記されていますので、信用はできそうです。一方「スティーミン」については1960年の発売とする記述がweb上でいくつも見られますが、その情報源は不明であります。
マッチでタバコに火をつけるマイルスのジャケの本作品を、今日は聴いて見ます。
スタートの「The Surrey With The Fringe On Top」は、ガーランドが切り込んでマイルスのミュートとの展開であり、これは四部作共通です。素敵な演奏であるのですが、アルバムの曲構成という意味では、個人的には「Something I Dreamed Last Night」を冒頭にすればとの思いがあります。
その「Something I Dreamed Last Night」は有名曲とは言えませんが、心に染み入るバラッドです。ガーランドのピアノとマイルスのミュート・トランペットが、夕暮れに昨夜の夢を思い出している光景を、聴く者に届けてくれています。残念なのはコルトレーンがお休みなことですが、1958年12月26日のプレスティッジでのコルトレーンのリーダー・セッションでこの曲が取り上げられています。
他のコルトレーンお休み曲は、最後に収録されている「When I Fall In Love」があります。こちらは有名スタンダード曲で、数多くのミュージシャンが取り上げています。快美なバラッドを、マイルスのミュート・トランペットがガーランドの甘さを連れて、酔わせてくれる演奏となっています。コルトレーンは生涯この曲の演奏に縁が無く、その意味でもここで参加して欲しかったです。
本作品は人気の面では「ing四部作」の中で低いものですが、私は「Workin'」で書いたのと同じ理由で、本作品を愛しております。