2018年3月4日掲載
Linda Merrill Sings
amr原盤                     1961年録音

 この作品は2009年に日本で、シナトラ・ソサエティ・オブ・ジャパンが復刻発売したものです。それまでは、オリジナル盤屋でもお目にかからない作品だったとのことです。

 シナトラ・ソサエティ・オブ・ジャパンは何作も隠れたヴォーカル作品を復刻してきましたが、それにはビル・リードという方が関わってきたようです。”探偵”ビルと、その筋からは呼ばれている方とのことです。封入解説に書かれている、探偵ビルのコメントを、少し書きます。

 世の中には「One Shot Winder」と呼ばれる歌手が、多々いたとのことです。二枚目は発売されなかった歌手とのことですが、それだけならばどの時代にもおります。ここで探偵ビルが言う「One Shot Winder」とは、LPレコードの勃興期の1955年から10年間ほどに、一枚だけ発売して消えていった方を指すとのことです。なぜこの時期なのかは探偵ビルは明言していませんが、私が思うには歌に才能ある方の多くが、ジャズ歌手の道を目指していたとのことなのでしょう。そして「One Shot Winder」は、250名程いたとのことです。

 さて今回のシナトラ・ソサエティ・オブ・ジャパンからの本作復刻にあたり、探偵ビルはこのリンダ・メリルについて調べました。結果的には多くの情報には行き着かなかったとのことですが、次の二点の情報を得たとのことです。

 1つ目は、彼女は「One Shot Winder」ではなかったとのことです。1975年に自主プロデュースで、ニール・ダイアモンド作品集を発表したようです。

 二つ目は、1969年にオクラホマ州で開かれたロデオ大会で歌ったとのことです。

 これだけの情報で勝手に想像するならば、レコーディングのチャンスを得ながらもスポットライトが当たらなかったリンダさんは、地元で過ごしながら歌うことも続けていたとのことなのでしょう。

 コンボをバックにした本作を、今日は聴いてみます。

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 確かに歌唱力は高いです。それに、可愛い声と大人へ近づいている女性の魅力が感じられる、歌い方です。しかしながら作品として盛り上げに書ける内容です。それはリンダさんの資質によるものではなく、プロデュース側の問題なのでしょう。

 amrというレーベルはシカゴにあり、想像する限りには個人の道楽レーベルではないでしょうか。またビルさんの解説によれば、バック陣の中のテナーサックス奏者はこのレーベルのオーナーとのことであります。その演奏内容は、他のメンバーも同様なのですが、演奏好きの集まりという感じです。

 シナトラ・ソサエティ・オブ・ジャパンの2009年の復刻販売は、千枚ほどなのでしょうか。歌手を夢見た女性の夢はシカゴの自主制作に毛が生えたようなレーベルからの発売までで終わりました。しかしながら、それから50年近く経ってから世界で千人がこの作品を聴いたということで、彼女の夢はもう少しは花開いたことになるのでしょう。

 彼女の人生を勝手に頭に浮かべながら、この作品を聴き終えました。