2018年1月5日掲載
Oscar Dennard         The Legendary
somethin’else原盤     1958年7月録音

 レコード会社は商売ですから、常に売れるものを探しており、ジャズに関しては発掘作業が売れるもの探しの重要な要素になってます。今日の主役オスカー・デナードは、日本で本作品が発売された一瞬だけ、その名前が世に知られたピアニストです。

 本作の録音地はタンジールというところで、今はモロッコの一都市であります。しかし複雑な歴史を持つタンジールは、本作録音当時は13ヶ国での共同統治となっていました。その地に、アイドリース・シュリーマン(tp), ジャミル・ナッサー(b), バスター・スミス(d)と一緒に楽旅をしていたデナードが、タンジールのラジオ局で演奏したものが本作品です。

 発売元はこの作品を発売した際には、売るためにいくつもの逸話を、この作品となった当時の録音テープにつけていました。それは、このラジオ局での演奏はミュージシャンの中でひそかに話題になり、マイルスやマッコイ、そしてディジーにテープの複製が渡っていたというもの。恐らくは盛るだけ盛った話なのでしょう。

 そんな盛った宣伝文句にまんまと乗せられて購入した私は、一度聴いただけで、今までCD収納箱に本作を眠らせておりました。3300円で発売されていたので、1980年代後半までの発売だったかと思います。

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 アイドリース・シュリーマンのバンドなのです。シュリーマンがメンバーを集めて、ヨーロッパを仕事を求めながら旅を続けているうちに、北アフリカのタンジールから声が掛かり、そこで演奏していたらラジオ局が目をつけて本録音となったのです。

 そのテープを持っていた関係者が、「シュリーマンの未発表」という宣伝文句では誰も食いつかないであろうと考え、「幻のピアニスト」の作品という盛りに盛った宣伝文句で何とか日本のレコード会社に売ることができた、というのが実際なのでしょう。

 頑張るシュリーマンの後ろで、何とか演奏しているピアノが聴こえる作品です。