アート・ファーマーは1928年生まれですので、この録音時点では25~6歳の時となります。
大物ミュージュシャンから声を掛けられ続けたファーマーは、その演奏と共に、人柄も良かったのでしょう。1951年にワーデル・グレイ,1952年にライオネル・ハンプトンと演奏を共にし、ジジ・グライスとバンド活動した後には、1956年にホレス・シルバー,そして1958年にはジェリー・マリガンと演奏しておりました。
そんな中でリーダー作品も発表していったファーマーですが、代表作となると1950年代後半とのなってきます。しかしながら1950年代前半から中盤にかけたプレスティッジに吹き込んだ作品も味わい深いものが多いです。
そのプレスティッジの中で最初のリーダー作である本作品は、2つのセッションから構成されています。
1月には、ロリンズ,シルヴァー,ヒース,そしてクラークとのクィンテットでの録音。
11月には、ウイントン・ケリーを入れてのカルテットでの録音であります。
なおファーマーは1999年10月に亡くなったのですが、私がその訃報を目にしたのは、マレーシア赴任しアパートに落ち着きネットに初めて繋いだ時だったと、記憶しております。
ロリンズ入りのクィンテットは、やはりロリンズの存在感が強く、そしてシルバーもおり、ファーマーが遠慮している感じがします。ロリンズはファーマーより1歳若いのですが、この時期にはマイルスやモンクと五分に渡り合っており、彼の存在感が確立されており、ファーマーとの差は歪めないものです。
しかしながらファーマーは、カルテットでは存在感を示しております。CDで聴く場合は、カルテット編をプログラムしてお聴きすることをお勧めします。「Autumn Nocturne」,「I'll Walk Alone」,そして「Alone Together」での、優しく歌い上げる演奏は聴きものです。ケリーのピアノも輝いており、ファーマー初期の輝く姿が目に浮かんできます。