カークの初来日は1964年のことですが、その時のポスターには「奇人ローランド・カーク」と書かれていたそうです。こんな感じの扱いはアメリカでも日常的であったため、まだこの時期では、彼の音楽性が正面から理解されていなかったのでしょう。
今日取上げるカークの作品は、代表作中の代表作。2歳の時に看護婦が、カークの目に余計に薬を入れてしまったために失明した過去を思い出させるようなタイトルの作品です。
カークの魅力の一つは、彼が作る曲が素朴で情緒豊かなことであろう。この魅力は演奏にも言えている。アップテンポの『a handoful of fives』、人間の悲哀を描ききったバラッドであるタイトル曲、そして『the black and crazy bkues』というブルース。どんなタイプの曲でも、彼の魅力が詰まっている。カークは『the black and crazy bkues』を、自分が死んだら、この曲を演奏してくれと言ったとか。素朴さの中に深い思慮が込められている、素晴らしい演奏です。