フランスのテナー・サックス奏者バルネ・ウイランの作品です。映画音楽であり、僕が1988年に購入したCDでは、2つの映画向け作品がカップリングされております。
一つは、「un temoin dans la ville 」で、邦題は「彼奴を殺せ」で、日本公開は1960年4月。Kenny Dorham(tp),Duke Jordan(p),Paul Rovere(b),Kenny Clarke(d) との、クィンテットでの吹き込みです。
もう一つの映画は、「jazz sur seine」というもの。こちらに関しては殆ど情報を得られませんでしたが、「セーヌ川のジャズ」という邦題の映画かも知れません。Milt Jackson(p),Percy Heath(b),Kenny Clarke(d),Gana M'Bow(per)が参加しております。
「死刑台のエレベータ」でのマイルスとの共演で注目されたバルネでしたので、この2本の映画音楽の依頼があったのでしょう。なおこのカップリングCDでは、「彼奴を殺せ」の方のジャケを使用しております。
「彼奴を殺せ」は、映画のサントラ盤という趣旨通りの内容。平穏な日常の生活,ちょっとしたハプニング,過去の回想,精神的に追い詰められる・・・、と言った場面が想像出来る曲が続きます。12曲中、3分ほどの曲が5曲。これはジャズ演奏と言える内容で、過去の回想シーンが頭に浮かぶ「Melodie pour les radio-Taxis」が、バルネを含めての好演があって良かったです。残りの7曲は、効果音的な演奏が多かったです。ジョーダンは自分の演奏スタイルを変えている場面も多く、恐らくは苦労した演奏だったのでしょう。この7曲では、クラークのドラムが効果的に使われております。そんな思いで聴いていたのですが、「彼奴を殺せ」というタイトルから想像させる殺人場面に相応しい曲が無かったのが不思議でした。
さて、「セーヌ川のジャズ」の方。こちらも12曲ですが、効果音的な演奏は無し。どれも、普通のジャズ演奏で、サントラを意識させるものではないです。そしてバルネは、力を抜いた演奏をしており、なかなか味のあるテナー・サックスを聴かせてくれます。4曲の作者が D.Reinhardt と記されておりますが、これはジャンゴ・ラインハルトのことなのでしょうか。兎に角、フランスを感じさせるこの4曲での、リラックスしたバルネの演奏は、聴きものです。