クレジットにピアノと歌とあり、反射的に今回の女性歌手特集の山に放り投げた作品ですが、ミッシェルさんはピアニストであります。歌っていたとしても、ほんの余興程度のもののはずです。
1953年にオークランドに生まれた彼女は、6歳からピアノを始めました。1973年よりオークランド周辺で自己のトリオを率いて活動を始め、その6年後にはNYに進出したのです。NYでも自己のグループで活動する一方で、オリバー・レイクなどとも共演しておりました。ラテン系のバンドにも入っていたことがあります。そんな彼女の名前が知れ渡るようになったのは、1980年代に入ってから、スティーブ・コールマンとの交流からでありました。
本作品は、モントリオールのジャズ祭にピアノ・トリオで出演した際の、ライブ作品であります。
意外にもオーソドックスな演奏スタイル。経歴からすれば、フリーっぽさがあってもいいのに。僕が持っているコールマンの作品に彼女が参加しているかは記憶にありませんが、今度確かめてみたいものです。
さて、歌の方ですが、6曲目のキューバ民謡『for agayu』で歌っております。しかし、歌と言うよりは、アフロ・キューバン音楽の中での、掛け声という存在のものです。
最後の方には、彼女作でモンクに捧げた『for monk』という曲あり。明るいフリーっぽさで、演奏しております。最後に取上げた曲は、EW&Fの『spirit』です。済んだ夕方の空を思う浮かべるメロディを、美しく弾くミッシェルさん。そこで止めておけば良いのですが、お世辞にも上手いとは言えない歌を披露しております。
そんなこんなで、モントリオールのジャズ祭を無難に盛り上げた作品と言う内容であります。