クリス・コナーとメイナード・ファーガソンとの、共演盤です。録音当時には円熟期を迎えていたクリスと、ファーガソン楽団で絶好調な時代を送っていたトランペッター・ファーガソンとの接点は、ケントン楽団であり1953年のことです。しかしそれはごく僅かな期間であります。クリスがケントン楽団に加わったのが2月上旬、そしてファーガソンがケントン楽団を辞したのが2月の中旬なのです。つまりこの作品は気心知れた二人の共演ではなく、アトランティックのネスヒ・アーテガン氏の企画モノということになります。
当時ファーガソンはルーレットに所属していましたが、人気者ファーガソンだけにルーレット側からOKがなかなかでなかったとか。そこでルーレットにコナーを貸し出す条件を付けて、ようやく録音に漕ぎつけたそうです。因みにルーレット側でのファーガソン-クリス共演盤は「トゥズ・カンパニー」であります。
ファーガソンと言ったら、ジャズを聴く前から知っているジャズ・ミュージュシャンの一人である。兎に角、ロッキーのテーマなのだ。ハイノート連発決めのトランペッターである。この1970年代中頃の彼の芸風は、1950年代にファーガソン楽団を結成した頃からのものらしい。このコナーとの共演盤でも、ハイノートで頑張っている。また彼のバンドは、ひたすら陽気なバンドである。
この演奏で歌うコナーは、大劇場歌手に変身した趣である。いや、戻ったというべきかな。それまでのお客さんを見つめながら歌う雰囲気から、上手から下手まで気を配りながら歌う感じである。このファーガソン楽団とコナーの組み合わせは、楽しめるものである。
『バナナの木陰に二人の女』という曲がある。『two ladies in de shade of de banana tree』という曲だ。ハロルド・アーレン作のものだが、調べてみたらラテン系の方々に愛されている曲らしい。アップ・テンポで歌うコナーと、ひたすら陽気なファーガソン楽団の演奏が、気持ちよく合っている。またスロー系の曲も、バンド・アレンジの面白さと、コナーの意外に器用な歌い方で、コナーの他の作品とは違った楽しさを提供している。「トゥズ・カンパニー」が聴きたくなったが、入手は難しそうである。CD化されたかどうかも不明である。気長に待つしかないのかな。