2005年9月11日掲載
Helen Merrill       Music Makers
OWL原盤             1986年録音

 このコーナーを開始した時から今に至るまで、日頃はLPを聴ける環境にはありません。従って、ここで取上げるのはCDが中心となっています。ジャズを聴き始めたころはLP中心に買っており、聴き始めに熱中した作品がなかなかここで取上げられないジレンマがあります。

 クリフォード・ブラウンのマーキュリーへの諸作もそんな例です。その好きになった作品の中には、ヘレン・メリルとの例の共演盤も含まれています。ブラウニーを聴くことによって好きになったヘレンさんと言えます。

 そんな聴き方をしていた時期に新譜発売され購入したのが、今日取上げる作品です。バックはオウルらしく、ゴードン・ベック(p,el-p),グラッペリ(violin),そしてレイシー(ss)であります。

20050911

 悲しみにくれる少女の嘆きの歌声の『round about midnight』で、この作品は始まります。ピアノとソプラノ・サックスが嘆きを大きなものにしていき、聴くほうは暗い気持ちのどん底に身を沈めている気分になってしまいます。続く『sometimes I feel like a motherless child』では、最初のソプラノ・サックスが、乾いた悲しみを淡々と吹いております。それに導かれて登場する歌は、やたら力強く歌っているが、悲しみが深くなるだけで、希望のかけらも感じさせないものです。三者一体での悲しみの共演といったところ。

 しかし、こんな世界から抜け出したいと思いながらも聴き入ってしまう不思議さがあります。そして3曲目も同様に悲しみ。多分フランス語で歌っている『a tout choisir』です。この3曲の展開は、なかなか他の作品では味わえないものです。4曲目以降は、ベックがエレピを弾いたり、グラッペリが加わったりで、この世界から少しは解放されます。

 それにしても録音当時は57歳のメリルさんですが、意欲満々の歌手ですね。