先ずはイェスパー・シロについて、「ヨーロッパのジャズ・ディスク1800」を参照して説明。1941年コペンハーゲン生まれの彼は、王立デンマーク大学でクラリネットを学び、1961年から演奏活動を始めました。アルトやテナー・サックスも演奏しながら、1966年から放送局のビッグ・バンドで活動しておりました。また地元のクラブでも積極的にライブを行っていたとのこと。パーカー,ゴードンなどのスタイルを体得した歌心のある演奏とのことです。
次にこの作品のタイトルにあるリチャード・ブーンについて、「新・世界ジャズ人名辞典」から説明。1930年にアーカンサス州に生まれ、5歳で教会の合唱団で歌い始め、また12歳でトロンボーンを始めたとか。1946年にコンテストに優勝してプロ活動を始め、陸軍ダンス・バンド時代を経て、除隊後は大学で音楽を学びました。その後LAで活動しながら、ソニー・クリスやデクスター・ゴードンなどと共演を重ねました。1966年から3年間、ベイシー楽団で活動しており、一般的知名度はここでのものが高いのでしょうか。1970年以降は活動の場所をコペンハーゲンに移しており、1999年に亡くなっております。
本作品は、シロによるコペンハーゲン仲間への追悼作ということなのでしょう。シロはこの作品でテナー・サックスの他に歌も披露しており、ピアノ・トリオをバックにしての録音です。
シロのテナー・サックスはゴードン・スタイルそのままのものです。麻薬をやらないゴードンと言ったとこでしょうか。ブーン云々とか歌入りとかは一切気にすることなく、ワン・ホーン・クァルテット作品として気軽に楽しめる1枚です。美旋律欧州ジャズばかりに注目が集まりますが、このようなスタイルのテナー奏者もコンスタントに作品を発表しているのも、欧州ジャズの一つの真実なのでしょう。