「香格里拉」はシャングリラの広東語表記で、広東語での発音は「ひょうごれいらい」となります。尖沙咀にあるシャングリラ・ホテル近辺に行く事が多い僕は、度々タクシーの運転手に、「ひょうごれいらい」と告げております。そんな風に縁があるシャングリラですが、同名の作品を今日取り上げるまで、その意味は知りませんでした。
何でも「1933年に英国の作家ジェームス・ヒルトンが発表した小説「失われた地平線」 に出てくるチベットの山奥にある謎のラマ教寺院「シャングリラ」(サンスクリット語で理想卿の意)を起源とし、現在では「桃源郷」や「理想卿」を意味する言葉になっている。」とのこと。
さてそんなタイトルのピアノ・トリオ作品を残しているルイス・ヴァン・ダイクさんは、1941年アムステルダム生まれで、7歳からお父さんに音楽を教わりました。1959年にアムステルダムに進み、そこでジャズに興味を持ちました。1965年には初リーダー作を吹き込んでおり、着実に活動しておりました。一般的知名度としては、アン・バートンの吹き込みへの伴奏が、知られております。
このコーナーでバートンの『バラッズ&バートン』を取上げた際に、僕はダイクのことを然も知っているように書きました。実はそれまで、彼のリーダー作を聴いたことが無かったのです。今日取上げる作品を、ネット通販店DNの中古盤特集で入手したのが、彼のリーダー作初買いとなるのです。
さて一般的には、ダイクはdykeと表記されてますが、この作品にはdijkと表記されてます。ひょっとして人違いで、また知ったかぶりになるのではと焦りましたが、顔は全く同じ方でありました。
鳩と蝶が舞っているような空間がある冒頭のタイトル曲は、まさに桃源郷の雰囲気です。ダイクのピアノは、クラシック畑出身を感じさせる響きを伴いながら、心地よく歌う演奏です。歌と言えば、グローバー・ワシントンJrがヒットさせたらしい『just the two of us』,ビートルズの『blackbird』,そしてビーリー・ジョエルの『just the way you are』とポップス3連発を、ダイクは披露しております。メロディを大事にしながらクラシックの品性を漂わせ、そこに微かなアドリブを投入していく演奏が面白かったです。もう少しジャズっぽさを思いながら、これはこれで良い存在なのでしょう。
実はこの作品は、3500円という少し高めで購入しました。聴いた今では、購入して正解だと思ってます。こうなると「ピアノ・トリオ1600」で山口氏が推薦している1970年録音の『when a man loves a woman』が、無性に聴きたくなってきた。是非ともCD化を願う。