キング牧師が1963年のワシントン大行進の際に行った演説「I have a dream」は、20世紀アメリカにおいてJ.F.ケネディの就任演説と並ぶ名演説であった。非暴力による黒人の権利拡張と平等を訴えたキング牧師の活動に対して、1964年にはノーベル平和賞が贈られている。そんなキング牧師が暗殺されたのは、1968年4月4日のこと。その3日後にニーナは、ロング・アイランドでのウエスト・ベリー・ミュージック・フェアに参加した。
今日取り上げる作品は、その時のライブ盤である。
キング牧師追悼の「ホワイ」が収録されている。白人による黒人解放運動への巻き返しを歌った「バックラッシュ・ブルース」が収録されている。さぞかし重たい雰囲気なのだろうなと、思っていた。しかし、ニーナの歌には、澄んだ美しさが漂っている。怒りがあるはずなのに。
30数年経ってこの作品を聴く者は、その時代背景を考えない方が良いのではないかな。
様々なタイプの曲を実に美しく聴かせる、数少ない歌手にニーナは変貌してきたと言える内容だ。