「ダウン・イン・ザ・ヴィレッジ」の続編であります。さて、僕にはこの2枚のジャケットに関して、印象に残っていることがあります。
近々「九代目林家正蔵」を襲名するこぶ平師匠に関する、雑誌の記事です。彼の趣味であるジャズにスポットを当てた記事で、彼のリスニング・ルームの写真が掲載されておりました。オーディオはあまり写っていなかったのですが、油井正一さんから引き継いだと聞いたことがある膨大なレコード・コレクションが、大きく写っているものです。そして、壁にかけてあったLPが、このヘイズのライブ盤2枚でした。丁度、レコードでの復刻盤が出た時期だったのでしょう。ヘイズの顔を大写しで俯瞰で捉えたジャケットを見る度に、その写真を思い出してしまうのです。確か、住友VISA会員向けの雑誌だったと、こちらの方は薄っすらと記憶しております。
この作品は1989年にイギリスでCD復刻されたらしいが、渋谷ジャロさんで見かけた記憶は無いです。もっとも、この辺りに興味が無かった時代ですし、ジャロさん自体もCDの新譜仕入れにはそれほど熱心では無かったですからね。
そんなことを考えながら、CDの開始ボタンを押したのですが、長いMCの後に登場したのが、ご機嫌なアップ・テンポのハード・バップで、ヘイズの真骨頂が聴けます。続くスタンダード「エンジェル・アイズ」における、デューカーのミュート・ペットと、ヘイズのヴァイブ、そして硬質のベックのピアノは、美しさが輝いております。
続くヘイズ作の「ソーセージ・スクレイパー」という、キャッチーなタイトル,キャッチーなテーマのミディアム・テンポのブルースが登場してきます。9分近くのこのブルースが、このクィンテットの実力が存分に出ている作品ですね。LPでいうところのA面のこの3曲は、実に楽しく聴ける内容です。
今までこのコーナーでヘイズ関連の作品を何枚も取り上げてきましたが、ヴァイブには否定的な書き方があったかと思います。それは、サックスをもっと聴きたいとの欲求からでした。しかし、「エンジェル・アイズ」でのヴァイブによる美の表現、サックスによる動の表現に対して、ヴァイブによる静の表現を、強く感じ取りました。
B面も、最後にシルバー作の「イエー!」で豪快に締めて、この名盤は終了します。