2004年6月28日掲載
Yosuke Yamashita    Mina's Second Theme
Victor原盤               1969年10月録音

 山下洋輔のディスコグラフィもwebに見つけられなかったのですが、日本フリー・ジャズの代名詞だった彼はこの時代に、多数の作品を残していることでしょう。そんな作品群の中で、僕はこれ1枚しか持っていないのですが、その理由は実に曖昧なものです。かつてどこかの掲示板に、「フリー山下はミナのセカンド・テーマだけ持っていれば十分だ」と嘯いたことがあるのですが、何故そのようなことを書いたのか自分でもはっきりしません。

 中村誠一と森山威男とのトリオ演奏です。

20040628

 山下洋輔は麻布高校出身だそうである。神奈川の僕でも知っている、有名校だ。おぼっちゃま&頭良い高校だと、認識している。 この盤に解説を書いている油井正一さんが山下の頭脳について面白いエピソードを紹介している。

 油井さんが訳した書物の間違いを、山下洋輔は指摘したそうだ。それは、不定冠詞の特殊用法によるもので、高度な英語知識がなければ無理なことだと油井さんは言っている。

 さて、何故この二人の交流があったかと言えば、1968年に山下洋輔が音階としてのブルー・ノートを研究するために、人を介して油井さんにレコードと文献を借りたことが発端なのである。そして半年後に山下洋輔は、ピットインで研究成果を発表し、かつ「音楽芸術」に論文を載せたそうだ。それを油井さんは、絶賛している。

 そして、この研究を通じて山下洋輔が得たもの一端として、「ジャズの約束事は一切無視していいものだ」という言葉があるとのこと。それと同時に山下洋輔は、現代音楽や実験的ニュー・ジャズには興味が無いとも、述べている。

 そんな油井さんとの経緯を得て、この盤は吹き込まれた。ここでタイトル曲に関して、少し述べておく。

 1967年に国映製作の「荒野のダッチワイフ」という、ふざけているのか考え込んだのか分からないタイトルの映画があった。二人の殺し屋の決闘が主題で、殺し屋の情婦がミナ。そして、この映画の音楽として、山下クァルテットが1時間ぶっ通しの演奏が使われている。この映画の中でミナが歌う挿入歌を素材としたのが、「ミナのセカンド・テーマ」なのだ。


 油井さんの解説を写したここまでで、書くのに疲れてしまったが、山下洋輔トリオの演奏は突き抜ける快感を感じさせてくれたものだ。ビルをぶっ壊した粉塵だらけの彼方に、輝く太陽を感じさせるものだ。

 もう一度聴けば、書き写した微かな疲れなど、吹っ飛ぶであろう。