1954年のライオネル・ハンプトン楽団の欧州楽旅のメンバーは大変豪華だったそうで、ブラウニーやクインシー・ジョーンズなどが参加していたそうだ。その中に参加していた二人、ブラウニー同様に覇気溢れたトランペッターのアート・ファーマー、そしてクインシー・ジョーンズ同様に作・編曲に長けたジジ・グライス(as)がコンビを組んで、欧州楽旅終了後にプレスティッジにLP2枚分の録音を行ったのである。
今日取り上げるのは、その後半の作品。デューク・ジョーダン(p),アディソ・ファーマー(b),フィリー・ジョー・ジョーンズ(d)と組んでの録音である。
グライスの作・編曲力が光る作品。6曲中5曲がグライス作の曲であるが、「ニカズ・テンポ」や「イヴニング・イン・カサブランカ」という有名曲よりも印象に残ったのが、「サン・スーシ」というカリブ海にある島をイメージして書かれた曲である。楽園の安らかさを感じられる曲であり、また編曲も曲自体の内容をさらに膨らませたものになっている。ファーマーのミュート演奏が特に印象的であった。
このファーマーとグライスのコンビがすぐ解消してしまったのは残念であるが、その後の二人の活躍の出発点となったコンビ活動であったと思う。