この盤が新入荷コーナーにあることによって、香港唱片のジャズ・コーナーの仕入状況がはっきりと分かった。輸入代理店から送られてくる入荷リストを見て、適当に丸印をくれているのだ。そうでなければ、同時期のヴァーヴの諸復刻から、この作品を選ぶ訳は無い。何しろ、キャンディドのリーダー作なのだ。
では、それを買った僕の心理は如何なるものかというと、今までこのコーナーでキャンディドについて冷たい書き方をしてきた。キャンディドが入っていないピアノ・トリオだったら良かったのに、とか書いてきた。このキャンディドを正面から捉えたジャケを見たときに、俺をしっかり聞いてみろと、僕を恫喝しているように感じたのだ。タイトルの通りにアル・コーンが参加しており、他にはディック・カッツ(p)が入っているシクステットであります。
話を香港唱片に戻すと、こんな作品を仕入れてくれる店は香港では貴重な存在であり、これからもちょくちょく利用したいと思ってます。
キャンディドさんは、キューバ生まれのお方であり、キューバで人気ドラマーだったそうです。1952年にアメリカに渡り、その後の活躍は、みなんさんご存知のことでしょう。
当然この盤では、彼のコンガ演奏が中心の内容であり、それは軽快そのものの演奏です。共演者は、そのコンガの流れを盛り上げるように、好演を繰り広げています。アル・コーンのテナーはもとより、ジョー・ピューマのギター、そしてディック・カッツのピアノも、キャンディドの演奏にピッタリとハマっております。このカッツさんは、同姓同名の方がイギリスとアメリカにおりますが、間違いなくアメリカのカッツさんであります。
俗に言うB級名盤、というよりもB級好盤なのでしょうが、他の盤では決して味わえない内容と言えるでしょう。強いて言えば、『poinciana』で聴かせた少し捻ったアレンジが他の曲でも聴ければ良かったのですがね。