2003年6月6日掲載
Bud Powell         Earl Bud Powell Vol.6
                               (Writin' for Duke,63)
Mythic Sound原盤        1963年録音

 さて、このパウエル集の予約受け付けが始まった渋谷ジャロさんでは、その予約者を書いた紙を張り出しておりました。やはりLPボックスがCDを倍以上の勢いで予約数を獲得しておりましたが、驚いたのは両方を予約している人が、僕が記憶しているだけで10人近くいたこと。例のアルバイト君もそうだし、髭の中間派の方もそうだし、兎に角この予約者リストを見て、この作品へのジャズ愛好者からの熱い期待を実感したものです。

 確かにCDとLPの収録曲には2~3曲の違いがあったからなのでしょうが、それ以上にこの時期に胸躍らせるようなジャズ作品が少なかったことが、大きな要因なのでしょう。

 さて、第6集。今までの5作と違い、これは1963年2月に録音したもの1種類だけの収録です。

 さて、何故エリントンとの疑問があります。クレジットにはレコーディングのスーパーバイザーとして、エリントンが記されております。各集にフランシスが書いた解説があるのですが、今までは読んでおりませんでした。しかし、何故エリントンの疑問を解決するためには、読まない訳にはいかない。で、読みました。

 「2月の初めにエリントンからの電話があった。」という書き出しだ。何で巨匠エリントンがフランシスを知っていたのかが疑問ですが、それはやり過ごしましょう。兎に角、エリントンがパリを楽旅中に電話してきたらしい。パウエルのことを心配していたのだ。何でもフランク・シナトラも同様にパリに隠匿しているパウエルを心配しており、エリントン監修のもとでパウエルのレコーディング機会を申し入れたとのことだ。この後もフランシスはいろいろ書いているが、ここまで分かれば僕には十分。

 兎に角、これはしっかりしたスタジオ録音。Gilber Rovere(b)とKansas Fields(d)との演奏です。

20030606

 エリントン絡みのレコーディングですから「サテン・ドール」ですが、堂々とした正面から切り込んだ演奏が印象的。続いて収録されている「ゲット・イット・バック」のパウエル節と、実に好対照で面白いもの。「ディア・オールド・ストックホルム」にゾクゾク感があり、僕好み。フランシスの部屋で過ごしている楽しさを描いたのであろう「rue de clichy」も、良い出来です。

 ジャケットに写っているエリントンとパウエルなのですが、ジャズへの貢献度を考えたら幾ら貧乏業界とは言え、二人とも大金持ちのはず。金銭的という意味では全く違う立場の二人なのですが、この違いがあったからこそのこのレコーディングだったのでしょう。