2003年4月27日掲載
The Diamond Five      Brilliant!
Fontana原盤               1964年5月録音

 封入されている解説に詳しくダイアモンド5の経歴が書かれているので、簡単にお勉強。

 1955年にシーズ・スモール(tp,v-tb)を中心にダイアモンドが結成され、このダイアモンド5の原型となる。オリジナル・メンバーとして加わっていて「Brilliant!」に残っているのは、スモールとハリー・ヴァーベク(ts)だけ。この時にはスモールのアレンジ能力が高く評価されていたとか。

 その後1958年にクラブ「Zade」のオーナーの要請で、シーズ・シリンガーを中心に結成されたのがダイアモンド5であり、クラブ「Zade」を中心に幅広い活動を行っていたとか。それも1962年にクラブ「Zade」で活動出来なくなり、実質的なダイアモンド5の活動はここで終わったとか。

 しかしその後も断続的に活動を続け、1964年に吹きこまれたのが本作品となるわけです。スモール,ハリー,シリンガーの他に、ジャック・コールス(b)とジョン・エンゲルス(ds)が加わった作品です。

 因みに、ジャロさんでこの世界初CD化盤を買った際に、オリジナル盤コーナーにこの「Brilliant!」が飾ってあった。値段はこのCDの100倍ほどでしたよ。

20030427

 帯に「オランダの名コンボの最高傑作。ハード・バップ快演集。欧州幻盤の最高峰」と書いてあるが、フォンタナとはそんなに契約事が難しい訳ではないので、これまで一般のジャズ・ファンの手が届く作品ではなかったことは、日本の欧州ジャズへの感心の低さが大きな原因であろう。

 1960年代の欧州ジャズに関して僕の場合で言えば、Reaward から再発されたイタリア・ジャズの名盤、ジャスミンから再発されたテンポ(イギリス)の作品、これらに接することが出来たことで、ある程度まとまった形で1960年代欧州ジャズに触れられることになったのである。

 その時期は丁度この「今日の1枚」開始直後であったため、僕の欧州ジャズへの認識の深まり度は掲載済みの作品へのコメントをご覧頂ければ、お分かりいただける。

 1960年代前半の欧州ジャズは、真摯に本場アメリカの模倣を行いながらも、楽器演奏の歴史の古さからつながるテクニックの高さでもって、独自の色合いを加えつつある段階であった。そのことはこの「Brilliant!」にも言えており、アドリブという武器を得ながらグループ演奏での一体化を加えていったハード・バップの雰囲気に、独特の輝きを加えている。その意味では帯に書かれている言葉は過剰表現では一切ないものだ。

 素敵な演奏が6曲並んでいるが、最後に演奏されているスモール作の「monosyl」について少し触れておこう。モンクを連想させるリフから始まる明るく楽しい曲調であり、スモールのフリューゲルホーン(多分)にはマイルスのスタイルを赤ワインで煮込んだ風味が感じられる。ハリーのテナーにはグリフィンを始めとするミュージュシャンの影響が垣間見え、張り詰めた緊張感が加わっている。シリンガーに関してはブロック・コードを弾いていたならガーランドそのものという感じがし、スコールズの重低音のベースの音色に酔い、エンゲルズのフィリーばりのおかずが入ったドラムが楽しめるという内容である。

 欧州ならではのハード・バップを心行くまで堪能出来る作品である。